A Friendly Textbook on

半導体まるごと入門

ニュースが読める教科書
2026 / 全16章 + 用語集

ある朝の経済ニュース。

「TSMC が 2nm プロセスの量産を開始」 「HBM 不足で NVIDIA の GPU 出荷が遅延」 「日本の ラピダスEUV 装置を ASML から導入」

このひと続きの言葉が、ひとつの物語として読めるだろうか。 本書はそのための地図帳である。

ニュースに「半導体」が登場しない日はもうない。 米中対立、AI ブーム、EV シフト、経済安全保障 ── 大きな話題のほぼ全部に半導体が絡んでいる。

ところが「半導体って結局なんなの?」と訊かれて即答できる人は少ない。 石ころみたいな小さなチップが、なぜ世界を動かしているのか。 本書はその全体像を、文系・他分野のエンジニアでも追える形で描く。

この本でやること

技術書としての完璧さは追わない。代わりに 「ニュースが読める」 を一貫したゴールにする。

具体的には次の三つを実現する。

  1. 仕組みを「他人に説明できる」 — トランジスタが電子のスイッチであること、CMOS がなぜ低消費電力なのかを、数式なしで腑に落とす
  2. 製品の地図を描ける — ロジック・メモリ・アナログ・パワーという 4 つの大陸を区別し、CPU と GPU と HBM の関係を即答できる
  3. 産業構造を俯瞰できる — TSMC・ASML・NVIDIA・ラピダスが、それぞれ何をしていて、なぜニュースの主役なのかが分かる

三つの疑問に答える

本書全体は、読者が抱えがちな 三つの疑問 に答える構成になっている。

疑問① 種類が多すぎる → 第5〜9章「種類編」が答える。1枚の地図で全体像を掴み、各章で個別の大陸を旅する。

疑問② 仕組みが分からない → 第1〜4章「仕組み編」が答える。バンドギャップ、ドーピング、トランジスタ、CMOS。数式ではなく比喩で。

疑問③ 産業構造が分からない → 第13〜16章「産業編」が答える。水平分業の地図、装置と材料、地政学、これから。

そして 4 章ぶんの 「製造編」(第10〜12章) が、「種類」と「産業」をつなぐ。ニュース頻出ワード「2nm」「EUV」「チップレット」「HBM 接続」は全部ここで腑に落ちる。

この本の歩き方(章マップ)

Part主題
序章0このニュース、読めますか?
仕組み編1〜4半導体 / pn接合 / トランジスタ / CMOS
種類編5〜9分類地図 / ロジック / メモリ / アナログ・パワー / センサー
製造編10〜12プロセス全景 / 露光・EUV / 先端パッケージング
産業編13〜16水平分業 / 装置・材料 / 地政学 / 未来
付録用語集

各章は 15 分程度で読める ように設計してある。途中で詰まったら、隣接する章を斜め読みしてから戻ってきても良い。仕組み編は順番に読むのが楽だが、種類編は気になる章から拾い読みできる。

最初の一読目は、冒頭の Scene と章末の「読めるようになるニュース」だけを全章ぶん流し読みするのもおすすめだ。 全体地図が頭に入ってから本文に戻ると、各章の位置づけが急に立体的になる。

想定読者

逆に 想定していない読者:

私はずっと「半導体は専門用語の壁が高すぎる」と感じていた。 ニュースの 1 行を読むたびに 5 個のカタカナ用語が出てきて、調べると別の 5 個に分岐する。 だから本書では、用語の繋がり方を最優先にした。一つの言葉から隣の言葉へ、地図の上を歩くように。

合言葉

本書を通じて、三つの合言葉を置いておく。

合言葉① まず地図、次に細部

新しい用語は、地図のどこに置けるかを最初に確認する。「これはロジック側?メモリ側?」「これは前工程?後工程?」── 位置が分かれば、細部は後から染み込む。

合言葉② 「そもそも」を口ぐせに

「なぜシリコンなのか」「なぜ EUV なのか」「なぜ TSMC が独占なのか」── 一段深い「そもそも」を問い続けると、業界の構造が見えてくる。

合言葉③ ニュースで答え合わせ

各章末に「この章で読めるようになるニュース」を置く。読み終えたら実際のニュースサイトで答え合わせをしてほしい。新しい固有名詞が出ても、たいてい本書のどこかに座席がある。

一枚の俯瞰図

最後に、本書全体の地図を 1 枚で示しておく。各章を読み終わるたび、ここに戻ってきて自分がどこにいるかを確認してほしい。

仕組み編 (第1-4章)バンドギャップpn接合 / トランジスタCMOS「電子のスイッチ」を理解種類編 (第5-9章)ロジック / メモリアナログ / パワーセンサー / 通信製品の地図を描ける製造編 (第10-12章)前工程 / 後工程EUV / 微細化パッケージング「2nm」「EUV」が分かる産業編 (第13-16章)ファブレス / ファウンドリー / IDM / OSATTSMC / ASML / NVIDIA / Samsung / ラピダス米中対立 / CHIPS法 / EUV規制産業の地図が頭に入る読み終えると、半導体ニュースのキーワードを「地図」の上に置けるようになる
図 0.1 — 本書の全体構造。仕組み・種類・製造の3軸が産業編で統合される。

それでは始めよう。 最初の章で問うのは、最も基本的な質問 ── そもそも半導体とは何か だ。